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「吉広・・・なにやってんだよ~~~」
泣きながら踊り場をウロウロしていると
数日前のシルクハットを目深に被った男の人を思い出したんだ
“君には、敗者復活戦のメンバーを選ぶ権利が与えられた
これから数日後に、君は僕を思い出す
まず、最初は屋上からだ・・・“
「そうだ!あれは・・・今日のことだったんだ!」
涙と鼻水を制服の袖口で拭きながら
携帯ケースに挟んだカードを取り出した
「で・・・なにすればいいんだよ」
トランプカードのつるつるの真っ白い面をひっくり返すと
Jの一文字に一瞬青い一筋の光が走った様な気がした
「急がなければ!」
何故そう思ったのかは分からないけど
階段を駆け上がり
壁にはJ、どこだ
階段を駆け下り
床にはA1、どうなってる
見えない何かに駆り立てられて、息を切らせて辿り着いた
あそこだ、間に合った
淡く光る教室のドアを開いてつんのめりそうになりながら
「CALL!!!」
突風と共にくるくると渦を巻いて
突然現れた青く怪しく光る魔法陣に向かって力いっぱいそう叫んだ
なんでそう叫んだのかすら分からないまま
そして僕は召喚してしまった
それがいったい何なのかも分からずに
「これでいいのか、間に合ったのか、」
砂埃が舞う教室は静まり返って
まるで何事も無かったかのように
教壇側で、時計が静かに時を刻んでいる音だけが聞こえる
「なんで?何も変化がない・・・」
「そうだ、もう一度あの場所へ行ってみよう」
吉広待ってろ!
もう一度やり直すんだ
大丈夫、今度は絶対うまくいくから
泣きながら僕は駆け上がった
すると、さっきの場所には誰もいない
「あれ、え、なんで?」
まさか、何も変わっていないのか・・・
もしかして、今、地面に吉広が
「おい!洋司!なにしてんの急に走り出してびっくりするぜ」
「吉広・・・」
「なんだよ、なにその顔どーしたの?」
「あ、あれ?」
「行こうぜ洋司、次は英語、教科書持ってる?」
僕の右手は、教科書とノートとファイルをしっかりと抱えている
夢?白昼夢?
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