第一章

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「なんだと!少しくらい夢見てもいいだろうが」 山田が怒って立ち上がった。 「今こうしている時間も無駄なのよ。」佐々木も立ち上がった。 「会話に勝手に加わってきたのはそっちだろう」 この2人の口喧嘩は日常茶飯事であり、この会社の名物にもなっていた。 周りにいた従業員もまたか、という表情をしていた。 いつも通り、青山が止めに入る。 とりあえずふたりを椅子に座らせた。 「二人とも一応仕事中だから。やるなら後にしな。」 渋々ふたりは作業再開したが、山田の方はまだぶつぶつと文句を言っていた。 「おや、喧嘩はもう終わったかね。声がこっちまで聞こえてたよ」 奥のドアから、背が高く、体格の良い、穏やかな顔つきをした男性が 出てきた。 「株式会社アシスト・ワン」の森山社長である。 3年前に父親からこの会社を受け継いだ。 現在40歳ではあったが、会社が危なくなったことは一度もなく、むしろ父親が社長をしていた頃よりも会社は成長していた。 よほど才能があったのだろうか。
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