第一章

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(1) 講義の終了を告げるチャイムが鳴った。 「今日の講義はここまで」と教授が言った。 それが合図となり、生徒が立ち上がり、出口へと向かっていく。 青山拓斗は開いていた参考書とノートを閉じ、リュックに閉まった。 帰ろうと思い、講義室の出口を振り替えると、生徒の列が出来ていた。 この講義に参加している生徒は100人以上いるため、いつも外へ出るのに時間がかかった。 青山はため息をつき、席に座ってぼーっとしていた。 すると、右の方から自分の名前を呼ぶ声がしてその方を向いた。 そこには、同じ学科の久保がにやついた顔で立っていた。 「帰りにオレンジによって帰らないか?」 オレンジ、というのは牛丼屋のことである。 店の看板がオレンジ色だからそう呼んでいた。 「ごめん、今日はバイトがある。」多少申し訳なさそうに青山は言った。 「えー、今日もかよ。ほんと社畜やな。バイトが無い日の方がめずらしい。まあ、いいや。」 久保は不満を言いながらもあきらめて、他の友人の元へと向かっていった。 誘いを断ることに若干抵抗があった。 青山は何か頼まれたら断れない性格で、もっともな理由が無い限りは了承していた。
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