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ゴォーとまた激しいエンジン音が響く。
大きな機体は、自分たちの頭上を超え、大空へと舞い上がった。
あの飛行機はどこへ向かっているのだろう。
そして、あの機体に乗っている多くの人たちも・・・・。
新たに浮かび上がった白い飛行機雲は、すべての人の行く末を示しているから。
だんだんと小さくなっていくその機体を眺めながら、悟はにこりと笑った。
青空に浮かぶその白い帯は、とても眩しく見えるから。
長く、そして果てしなく続くその証を、ギュッと胸に握らせて。
悲しくなったり、寂しくなったり、たまには少し泣いたりして。
それでも、いま自分に与えられた場所を、大切にしたい。
だって、ホラ、道はどこまでも続いてるじゃん?
寂しくて泣いたりしても、そのあとには笑顔だから。
果てしない未来にも、きっと笑顔が待っているから。
だって、散々泣いても、いまの自分は笑ってる。
顔を上げればすぐ側に大好きな人がいて。
その瞳には、笑う自分が映ってる。
だから、ね。
いまの自分はすごく、すごく、しあわせ者なんだ。
「あのね、俺、黒沢のこと、すっごく好き!」
笑いながらその腰にさらにギュッと抱きつくと、大きな手の平に頭を撫でられた。
黒沢の手はやっぱり誰よりもあたたかくて。
指先から伝わる不器用なやさしさも。
風に乗って鼻を掠める煙草の匂いも。
すべてが、あの白い帯のようにキラキラと輝いて見えて。
果てしなく続く道の行く末が、とても眩しく映った。
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