黄昏ベイビー

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「いくぞ」 「へ?」  しばらくしてから自分の前に現れた黒沢は、シンプルなシャツとジーンズ姿。  髪もちゃんと整えていて、顔にはいつもの眼鏡。  着替えたのはいいとして、いくぞ、ってどこに?  おもわず固まった自分に、黒沢は呆れたような顔をした。 「母親が一時の飛行機でいくんだろう?」 「え?なんで知ってるの?」  まだなにも説明していないのに。  驚いて眼を見開いた自分に、黒沢はやっぱり心底呆れたような表情を見せた。 「おまえの電話を訊いてれば誰だってわかるだろ」 「あ、そっか」  なるほど、と納得していると、黒沢はテーブルに置いてあった車の鍵を手に取り、さっさとリビングのドアへと歩き出した。 「あれ?もしかして送ってくれるの?」  ソファーから立ち上がり、声をかけると、ドアに手をかけた黒沢がちらりとこちらを振り返った。 「時間ないんだろう、さっさとしろ」 「うん!」  なんだかうれしくなって、ドアを開けて待っていてくれている黒沢のもとへ駆け寄った。
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