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「意外と大切にされてるんだな」
「え?なにが?」
「いや・・・・なんでもねえよ」
訊き返しても、真人はなにも答えずに小さく笑った。
やっぱりその顔は不思議とうれしそうで。
なんだろう。
彩華も真人も、今日はなんだかうれしそうだ。
「ほら、もういけよ。彩華さん、飛行機に乗り遅れるぞ」
「え?あ、うん!」
促されて慌てて走り出そうとして、思い出した。
そういえば、真人に訊かなきゃいけないことがあったんだ。
「あ、ねえ、真人」
走り出そうとした体勢で振り返った自分を見て、真人は僅かに首を傾げた。
「なんで俺が黒沢ンちにいるってわかったの?」
真人にはなにもいってないはずだ。
自分の突発的な行動だったのに、真人はなぜかすべて知っていた。
一瞬眼を瞬かせた真人は、すぐに小さく苦笑を洩らした。
「おまえ、智紘になんかいっただろ?」
「え?」
「なんかおまえが落ち込んでるっていってたから。彩華さんとの予定がキャンセルになったのに、 俺に連絡してこないってことは家に帰ってねえってことだろ」
「あ・・・・」
「それならいく場所はひとつしかねえしな」
当たり前のようにいわれた言葉に、眼を丸くした。
きっと心配した智紘が真人に知らせてくれたんだろう。
でも自分に連絡すらしないでここまでわかっちゃう真人って、すごい。
「真人ってエスパー?」
「アホか。おまえが単純なんだよ」
結構真剣に訊いたのに・・・・。
真人は心底呆れた顔でため息を吐いた。
なんていうか、真人にはなんでもお見通しらしい。
わかってはいたけど、それでも、本当にすごい。
「悟ー!いくわよー!」
「はーい!」
すでに車に乗り込んだ彩華が、後部座席の窓から自分に手招きをした。
「じゃあ、いってくるね!」
「ああ、彩華さんによろしく」
真人に見送られ、車に向かって走り出すと、その傍らで再び彩華の声が響いた。
「まーちゃん!昌ちゃんに今度帰ってきたときは一晩つきあってもらうからっていっておいてねー!」
愉快気な彩華の言葉に、走りながら振り返ると、真人は苦笑を洩らして了解の意味も込めて大きく手を振った。
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