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「ねえ、母ちゃん。次はいつ帰ってこれる?」
「そうね、悟の夏休みには帰ってこようかな」
「ホント!?お休みもらえるの?」
「バカねぇ、悟。休みってのは奪い取るものなのよ~?」
「へ?そうなの?」
きょとん、とした自分を見て、彩華は細い腕を突き出して拳をギュッと握った。
「夏は休みをほしがる人がいっぱいだからね!そいつらに負けないようにいかに休みをゲットできるかが腕の見せ所なのよ!」
「それじゃ、負けちゃったらお休みもらえないかもしれないの?」
「ノンノン!母ちゃんをナメちゃいかんよ~?青二才どもになんか負けるわけないじゃなーい」
そういって、彩華は高らかに笑う。
たしかに彩華に敵う人間は少ないと思う。
あの真人や昌市ですら、彩華には敵わないと早々に負けを認めてしまっていたりする。
それくらいパワフルな女性なのだ。
「それに、まだ悟とデートしてないしね」
パチンとウィンクをして彩華は笑った。
「一緒にいこうと思ってたレストラン、夏にいこうね」
「うん!」
「そのときは黒沢さんも一緒にね!」
バックミラーを見ながら彩華がそういうと、黒沢はミラー越しにそっと眼を細めた。
たぶん、少し笑ってる。
そんな黒沢の仕草に、彩華は満足そうに笑って、「たのしみね」と呟いた。
壮大に広がる海の水面よりも、その笑顔はキラキラと輝いていた。
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