黄昏ベイビー

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「ちぇ・・・・つまんないの」  つまらなそうに唇を尖らせた自分に、黒沢はちょっとだけ笑った。  素っ気ない態度は変わらないけど、なんだか今日は少し違う。  もしかして機嫌がいいのかな?  滅多に笑わない黒沢の笑顔を、今日は何度も見た気がする。  こんな日はもちろん初めてで。  すごく得した気分だ。  それがとてもうれしくて、へらりと笑った自分の後ろ側で、再び激しいエンジン音が鳴った。  ゴォーという音と共に、飛び立っていく飛行機。  彩華の乗った飛行機の飛行機雲はいつの間にか消えてしまっていて、 青い空には新しい飛行機雲の長い帯が現れていた。  次々と浮かぶその痕跡は、いろんな人の行く道を示しているんだろう。  その道は、きっと、長く、果てしなく続いている。 「帰るぞ」  空の彼方へと消えていく飛行機が見えなくなってから、黒沢がそう呟いた。  おもわず顔を上げた瞬間、突然強い風が吹き抜けた。  堪らずフェンスに手をかけて、顔を伏せる。  生温い風は、身体全体を吹き抜けて、そしてすぐに鎮まった。  ゴシゴシと眼を擦りながら顔を上げると、黒沢は何事もなかったように髪をかきあげ、出口へと歩き始めている。  ハッとして。  弾かれたように駆け出して、手を伸ばした。
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