1人が本棚に入れています
本棚に追加
高校2年の春の事である。
風邪が長引くので大きな総合病院で診てもらう事になった。
病名は悪性リンパ腫であった。
私は病気の事を隠して学校に通う事にした。
同情なんてされたくなかったからだ。
通院日,病院でクラスメイトの『卯木崎 健一』とばったり会う。
「『藤野 佐知』さん、どうしてここに?」
「健一さんこそどうして?」
健一は恥ずかしそうに「いや、ばあちゃんがねぎっくり腰で見舞いに」
「私は……私は……」
私は誰かに頼りたかった。健一は明るくて頼りになる。
そして、こんな運命に翻弄された人生に疲れていた。
「悪性リンパ腫よ」
長い沈黙の後。
「クラスの皆が知らない事を話って事は僕が特別だから?」
「ただ、本当の事を知って欲しかったのよ」
私は嘘をついていた。
この時、恋に落ちた事だ。
ただ、切なかった。
神様は本当に残酷だ、厳しい闘病生活の時に今まで愛した事の無い人生に出会いをくれるなんて……。
「大丈夫、きっと良くなるよ」
「ありがとう。でも、この事は皆には秘密にしておいて」
「うん、そうするよ」
私達は場所を移動して自販機の前に来ていた。
彼はブラックコーヒーを私はミックスフルーツジュースを飲み始めた。
この場所は人けがなく落ち着いて話が出来た。
最初のコメントを投稿しよう!