別れと出会い

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それに、こっちにいればいくらでもバイトはあったし、 贅沢をしなければ、祖母からの仕送りと私の掛け持ちしていたアルバイトで生活できた。 ファーストフード店と駅前通りの書店。 ファーストフードでは笑顔をつくる練習くらいにはなったかもしれない。 狭い店内に変な縦社会が出来ていて、随分居心地は悪かった。 書店はすましてレジの当番。 時給は安かったけれど、本に囲まれているだけで、知的な自分になったような気がしてこのバイトは気に入っていた。 ああ…… 私の身の上話の途中だった。 ご主人が私に聞いた。 住んでいるアパートの家賃はいくらなんだと。 古いアパートで一年半後には取り壊しも決まっている。 その分家賃は安くて1DKで4万円。 ご主人に話しながら一年半後はどうなるんだろうかとぼんやりと考えていた。
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