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私は最初、何が起こったのかわからなかった。
ほんの数秒前のご主人の言葉が思い出せなかった。
けれど、その横で微笑む奥さんの笑み見つめるうちに思い出した。
奥さんが思い出させてくれた。
「……はい」
私は随分遅れて返事をすると、「ありがとうございます」と、付け足した。
「真面目にな」
念を押したご主人の言葉がどういう意味なのかはすぐにわかった。
この夫婦の中では高校生がラブホテルに行くことは不真面目なのだろう。
私は何もかも終わりにしようと思った。
ラブホテルに行くことも。
あの男と付き合うことも。
この時の私は出来そうな気がしてた。
私はご主人に連絡先を伝え、後日、学校への提出用に内定通知をもらうことを約束して事務所を出た。
明日学校へ行って、就職が内定したと言ったら、担任は目を丸くして驚くだろう。
まるで偶然が重なった運命。
これが私と『家族』との出会いだった。
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