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それからすぐに私と妹は自動車修理工場の裏手にある建物に住まいを移した。
駐車場の二階で簡易的なキッチンとユニットバスまである離(ハナレ)だった。
信じられなかった。
建物自体は古いけど、アパートよりもずっと広く、綺麗に掃除されていたので寂れた雰囲気は微塵も感じなかった。
「もう随分と使ってないから」
私たちの引っ越しを見守りに来てくれた奥さんは来るなり部屋の窓を開け放った。
奥さんが度々空気の入れ替えもしていてくれたのか、錆び付いた窓の鍵は見た目からは想像できないくらい軽々と開いた。
引っ越しと言っても私と妹はほとんど身一つ。
あるのは教科書とカバンと制服とわずかな服。
母とどこかの誰かの匂いの染みついた忌(イ)まわしいものは
全部、あの場所に置いてきた。
幸い、アパートの大家さんが処分してくれると言った。
私たちの境遇に同情していたというよりは
厄介者をいち早く追い出したかったのだろう。
私たちが引っ越すことを報告に出掛けた日、大家は私たちに行先も聞かずに、今までに見せたことのない笑顔を向けてくれたから。
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