別れと出会い

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美容師を目指していた菜々美は一緒に上京した友人が挫折をした後も辛抱強く勤め、 その傍らで通信制の専門学校を卒業し、美容師の資格を取得した。 通信制の学校は専門学校に通うよりも学費が三分の一程度だったので、私からのほんの少しの送金と、菜々美が生活費から学費を捻出すれば何とか足りた。 けれど、サロンで見習いとして働く彼女の給料は安いと言われていた私の初任給よりもさらに安く、 菜々美は余程生活を切り詰めなければならなかった。 さらに仕事と勉強とサロンでの練習をこなすことは金銭面以上に、肉体的にも辛かったはずだ。 実際、それに耐えかねた友人は夢を諦めてしまったのだから。 職種の異なる私たちの時間はどうしてもすれ違いが多く、 連絡方法は専らメールだった。 短い文字のやり取りが多かったけれど、スマホのスクリーンを行き来する絵文字たちはいつだって私たちの会話を盛り上げ、 お互いを笑顔にしてくれた。
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