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高校三年。
当時付き合っていた年上の彼との行為を済ませ、私はラブホテルから出て、一人工場の前の通りを歩いていた。
私を家まで送ってくれるような人ではなかったし、
私もそれを望んでいなかった。
じっとりと暑い夏には似合わない
渇(カワ)いた関係だった。
ホテルは私にとっては馴染みのラブホテルだったので、
その自動車修理場もいつもの通過点に過ぎなかった。
けれど、この日、私は偶然耳にしたふっくらと柔らかい声に思わず足を止めた。
「暑いねえ。そろそろお茶にしましょうか」
もちろん、私が言われたわけじゃない。
けれど、私は工場の前で立ち止まっていた。
作業場から汚れた服を着た従業員が汗だくの額を白いタオルで拭いながら隣の事務所へ入っていった。
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