別れと出会い

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行く当てもない私を拾ってくれた それならいっそのこと 最後まで面倒をみてほしい。 どこまで図々しいのか 怖いものなしなのか 不思議と迷いはなかった。躊躇いもなかった。 私は空になった氷菓子のカップを置いて言った。 「私をここで雇ってください」 向かいの古い黒いソファで息子と甥っ子がポカンとしたのは覚えてる。 だけど、ご主人と奥さんはそうではなかった。 「卒業したら……働くつもりなの?」 奥さんの言葉は柔らかいけれど、試すような響きがあった。 「……はい」 私は視線を下に向けたまま返事をした。 今から思えば、就職の面接だったら合格するとはとても言えない状況だった。
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