別れと出会い-2

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「あれ?」 私は素材置き場の棚を覗き込みながら一人呟いた。 いつも棚にあるはずのビスが一箱もなくなっていたのだ。 通常はこのようになる前にちゃんと補充されているのだが、それを行う工務係は生産の遅れで出荷業務に追われていたので無理もないのかもしれない。 私は仕方なく保管庫に向かった。 保管庫には直接トラックの荷台がつけられるようになっていて、約三日分の素材在庫が保管される。 トラックからの荷卸しも、素材の補充も普段は昼間に行うので、夜間にここに出入りするのは初めてだった。 何もないとわかっていても、なんだか背筋がゾクリとしてしまう。 真っ暗な保管庫に明かりをつけるとコンクリートの壁が冷やりと浮かび上がった。 どこか不気味な雰囲気に少しだけ手を早めた。 ビスと言っても何種類もあるので品番で確実に特定しなければならない。 箱入りのビスが並ぶ棚の前で手にしたメモと同じ品番を探していると、 誰かが階段を下りてくる足音が聞こえた。
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