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棚の隙間から階段の方を見ると、やって来たのは私の上司でもある製造部の保坂係長だった。
「……お疲れさまです」
私は目を合せないように囁く程度に言った。
背筋に……冷たいものが走る。
急いで手元の品番を確認し、並んでいるビスの箱の品番と照合する。
一文字ずつ確認して箱を手にすると、振り返る間もなく背中から衝撃を受けた。
その拍子に悲鳴をあげそうになるのに、叫び声があがらないのは
私の唇が彼の手で塞がれていたからだ。
「ここに降りて行くのが見えたから」
熱い息を含んだねっとりとした声が耳元で囁いた。
私は思わず首をすくめて身震いした。
「いい加減俺の気持ちに応えて欲しいな」
「離してください!」
私は思いきり彼の身体を振り払おうとした。
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