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私がここまで自分の口を汚すのには理由がある。
単に保坂係長が嫌いなわけじゃない。
間違いなく、彼には何の魅力も感じないが、
それ以前に
彼は既婚者なのだ。
私が保坂係長から食事に誘われるようになった頃、
私を交えた数人での雑談の最中、彼は「妻とはしばらくしていない」と、話していた。
話の途中、私だけに向けた視線を思い出してまた身震いした。
私は彼の妻がどんな人物かは全く知らない。
けれど、社内でも交流のある者たちの評判では、彼の妻は彼よりも一回りも年下の美人だという。
それを聞いた時、そんな女性が何で彼を選んだのかと胸の中で首を傾げたくらいだった。
だからなおのこと、私には彼のことが信じられなかった。
そんな妻がいるというのに、彼が私を気に入る理由などあるはずがないと思ったからだ。
けれど、私は今、目の前の彼を見て合点がいった。
おそらく彼は、ただ単に……
したいだけなのだ。
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