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それに気づいた時、
私は呆れると同時に疑問を抱いた。
薄暗いコンクリートの壁に囲まれながら彼とはできるだけ距離を置いた。
「どうして……私なんですか?」
「どうしてって……」
のん気に答えようとする彼の態度こそ、私の考えが正しいことを証明していた。
「なんでかなぁ……?」
保坂係長ははぐらかすように適当な返事をした。
そして、悪びれる様子もなく淡々と話を続けた。
「セックスレスだよ。セックスレス」
私は冷めた視線を投げて、彼にもわかるように大きなため息を吐いて見せた。
「子供ができた途端、全くだよ。今じゃ俺が触ることも毛嫌いしてる。そんなの見てたら今度はこっちも冷めてきたんだよ。やっぱり女は若いだけじゃダメってことだな」
彼は吐き捨てるように言うと、口元を緩ませて私を見た。
「……そう思ったら、君がえらく魅力的に見えてね」
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