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重い身体で着替えを済ませ、足を引き摺るようにして帰路についた。
しばらく忘れていられたのに、昔のことが走馬灯のように頭の中を駆け巡る。
あろうことか、母親が連れて帰ってきた苦い匂いまで思い出した。
私は髪を掻き上げ、首を振って夜風に長い髪をなびかせた。
自分にその忌まわしい匂いが染みついているような気までして、無意識にか駆け出していた。
家に着くなり、私は浴室に飛び込んだ。
服も下着も脱ぎ捨てて、まだシャワーのお湯が温まらないうちから身体に思い切り浴びせた。
洗い流せるものなら全部洗い流してしまいたかった。
ボディシャンプーのポンプを勢いよく押すと、いつもの倍以上の量を身体に撫でつけた。
首を洗い、腕を洗って、あの男に鷲掴みにされた胸をこするように洗った。
鼻の奥がツンと痛くなって、思ってもいなかった涙が出そうになると、私は上を見上げてシャワーを顔から浴びると
すべてを洗い流した。
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