別れと出会い-2

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仕事はみるみる減り、手の空いた主人は前よりも随分と外出が多くなった。 主人は脇にセカンドバッグを抱えて早足で出掛けて行った。 私は伝票処理などはしているけれど、会社の資金繰りの状態までは把握していない。 けれど、銀行からの融資の返済や支払いの残った機材のリース料などがあることは知っていた。 売上が減ればそれだけ資金繰りは厳しくなる。 主人や奥さんがどんな風に金策していたのかはわからなかったけれど、 ふと主人の横顔を見た瞬間に、 以前よりも痩せたことに気付いた時には 思わず胸が締めつけられた。 そんな主人の傍らで笑顔を見せる奥さんの髪には 白髪が増えていた。 そんな二人を目の前にして、 それが二人のためとはいえ、 明るく振舞うことは私にはとても辛く、居たたまれなかった。 けれど、私は笑顔でいるように心がけていた。 ……夫妻がそうであったように。
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