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少しの沈黙。
いつ彼がベッドを抜け出すのか、身体が少し身構える。
だけど彼は乱れたシーツの中で私を抱きしめながら天井を見上げてポツリと言った。
「マナブ……」
「え?」
「タカミ マナブ。俺の名前」
彼は自分の弱みを吐き出すように小さく言った。
「今度するときは名前呼んで」
「マナブ……。学校で学ぶのマナブ?」
「そう。そのマナブ」
「そう……。私は美香子。瀬森美香子」
「ミカコ?」
「うん。美しく香る子。とんだ名前負けなんだけど」
「いや、美香子、いい匂いがするよ」
彼は私の首筋を鼻で撫でた。
「やめて。汗かいてるし」
恥ずかしくなって首をすくめて彼の鼻先から離れようとすると、彼は私を一段ときつく抱きしめて隙間を埋めた。
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