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「実は今日……ちょっと嫌なことがあって、ホントは一人になりたかったんですけど、ここに足が向いたってことは、誰かと一緒にいたかったのかもしれない。なんていうのかな……ここはお店だからちょっと違うんですけど、誰かが作ってくれたご飯食べるとホッとするっていうか……」
私は初対面の彼にこんな風に口を開いていた。
そして、また杉本夫妻のことを思い出した。
「そっか……」
「……うん」
彼は図々しく詮索してくることもなく、静かに相槌を打っただけだった。
そして、安物のグラスに口をつけた。
「あなたはどうしてここへ?初めてなんでしょう?」
「まあ、ちょっと。君と似たようなもんかな。一人で飲みたくなったってとこ」
そして、彼は自嘲(ジチョウ)する。
「……一人で飲みたいって言いながら、家で一人で飲むのは耐えられなくてさ」
「そっか……」
「……うん」
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