一夜

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「私……そろそろ……」 私がそう言ったのは、瓶ビールが空になって二人がお冷に手を付けた時だった。 瓶ビールとラーメンではそれほどの長居も出来ない。 そもそも店は小さいのに人気はあるので席の回転は早い方が望ましいのだ。 言った直後に彼と目が合い、すぐに逸らした。 「……じゃあ、俺も」 その一言に、胸の奥が小さく跳ねた。 店を出てしまったら、もう「さよなら」なのだろうか。 彼との時間が思いがけずに心地よかったので、この時間が途切れてしまうのが惜しくなってしまった。 だからといって、この辺りにはしごができる飲み屋もない。 この店を出れば、後は帰路につくしか選択肢はないのだ。 彼が私と一緒に席を立ったことは 私に期待と寂しさを同時に抱かせた。
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