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何でもないフリをして、
他人から見れば何の変化もないはずなのに、
私の日常は少しだけ変化していた。
私はあれ以来、線路沿いのラーメン屋に顔を見せていなかった。
そこに限らず、コンビニでさえも、私は夜の外出を避けていた。
彼とは連絡先を交わしていない。
そのことが私を知らず知らずのうちに古いアパートに縛りつけていたのだ。
期待するのは馬鹿げているとわかっていても、万に一つを願ってしまう。
そんな私の願いが現実になったのは、
それから二週間後の週末のことだった。
かすれたインターホンの音に心臓が跳ね上がる。
私のアパートに訪問者などいない。
三日前に隣の部屋の住人が郵便物の配達間違いだったと、DMを手にして訪れた時には今よりももっと大きく心臓が跳ね、ドアを開ける手も震えたものだった。
その経験を踏まえていたとしても、鼓動は抑えきれなかった。
けれど、ドアノブに手を掛けるときには平静を装う。
期待はそれ以上の落胆を生むから。
深呼吸の後、私がゆっくりとドアを開けると、
彼が前とは違うスーツ姿で立っていた。
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