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私は咄嗟に言葉が出てこなかった。
彼も黙ったまま笑顔で佇んでいる。
そんな彼を見ているうちに唇の隙間からホロリと零れた。
「おかえりなさい……」
彼が「ただいま」と、言って靴を脱ぐと、私は彼を背中から抱きしめていた。
彼は次の瞬間には背中にいる私を一瞬にして腕の中に包み込むと、玄関先で息が苦しくなるほどの激しいキスを浴びせた。
私たちは何一つ言葉は交わさなかった。
けれど、私にとってはそれで十分だった。
「会いたかった」なんて言われるよりも、何倍も嬉しかった。
目は口ほどに、というけれど、唇はそれ以上だと私は知った。
自惚れでもいい
きっと、彼も同じ気持ちだったんだって思えたから……。
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