二度目の夏

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つい口が滑ってしまった。 私は自分の発言に後悔したものの、どうすることもできない。 「……飾っとくね」 私は彼が口を開く前にブーケを手にして流しに立った。 数少ない食器の中から一番大きなマグカップに水を注ぎ、花瓶代わりにしてブーケを飾った。 それをローテーブルに運ぶと、くすんだ室内で華やいだブーケだけが浮いている。 ため息と笑いが同時に込み上げる。 私が苦笑いを浮かべたままベッドを見ると、彼はすっかり目を閉じていた。 「結婚か……」 今度は声には出さない。 私は心の中で呟くと、 薄らと寝息を立てる彼にタオルケットをそっと掛けた。
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