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◆◆◆
俺は目を瞑ったまま彼女が掛けたタオルケットのささやかな重みに包まれていた。
つい先ほどまでまどろんでいた意識は彼女との会話でいくらか冴えていた。
咄嗟に寝たふりをしたのは、そこから先の言葉を思いつかなかったからだ。
今日の結婚式は大学時代の友人に招待されたものだった。
「アイツの嫁さん、大学教授の娘だってよ」
「へえ、アイツは講師から准教授になったんだろ? これで出世も約束されたようなもんだよな」
「将来安泰ってことか」
「やっぱ、家柄ってのは大事なんだよなぁ。自分を高めてくれる相手じゃねーと意味ねえよな」
「そうそう。まあ、高めるって言っても、いろんな意味で」
それまで久しぶりの再会で話に華が咲いていたにもかかわらず、
その話が始まると、俺は奴らの話に加わることが億劫でただぼんやりと聞いていた。
すると、輪の中の一人が椅子の背もたれにのけ反りながら俺に身体の正面を向けた。
「その点、学は大変だよなぁ」
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