足りない酸素

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「なんかさ、女って服でもバッグでも何でも常に欲しいものがあるってイメージでさ。休日といえば買い物に出掛けてる人種なのかと思ってたからさ」 「そんなの、お金がある人の話だよ。欲しいものがすぐに手に入る人は、手に入ったから次のものが欲しくなるんでしょ?」 私が言うと、彼は私を黙って見つめていた。 私は急に黙る彼に、明るく言う。 「でも……。今は欲しいもの、あるかな」 「何?」 彼は丸めたパスタを口に入れた。 「今日買ってもらったワンピースに似合う靴とバッグかな」 「だったら、さっき買えばよかっただろ?」 「そういうことじゃないの」 「何だそれ? よくわかんねーけど」 「欲しいって思ってるうちは夢も見れるし、そのために頑張れるじゃない?」 「ふーん」 彼はあまり納得のいっていない様子だった。 それもそのはず。 彼にとっては、靴もバッグも頑張って手に入れる対象ではないのだから。
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