足りない酸素

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ガクちゃんがどうしてこんな時間にやって来たのか…… 私はいつも通りその理由を聞かなかった。 ただ、彼が私を必要としていることは十分に伝わったし、 必要としてくれたことも嬉しかった。 彼の腕を撫でる手のひらにその思いを込めると、彼が一段と強く私を抱きしめ、私と身体を密着させた。 そして、鼻の先で私の頭を撫でた。 「久しぶりに……兄貴と話した」 「そっか……」 私は彼の腕をさする手を止めなかった。 「兄貴のヤツ、離婚するんだってさ」 「そっか……」 私は彼の腕をほどいて身体の向きを変えると、彼の頭を細い腕で包み込んで自分の胸元に引き寄せた。 「ガクちゃん、おやすみ」 「カコ……」 彼のおでこにそっと唇を押し当てる。 しばらくすると、彼の力が抜け、静かな寝息を立て始めた。
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