足りない酸素

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私は彼から少し距離を置いて歩いた。 すると、先を行く彼が振り返る。 「この店見る?」 私の歩調が緩まったのを勘違いした彼が店を横目に見ながら言った。 私は首を横に振ると、早歩きで彼の背中に追いついた。 「ごめん、こういうところ……慣れてなくて」 実際、私は久しぶりの華やかな空気に圧倒されていた。 おまけに店内は眩し過ぎて目がくらむ。 彼は私が冗談を言ったと思ったのか、クスリと笑って目の前の店を通り過ぎ、二軒隣の店に入った。 店内のディスプレイはもう秋物だ。秋の季節に映える深みを増した色合いが目に鮮やかだった。
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