足りない酸素

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「出ていいよ」 私は喉の奥から声を絞り出した。 まだ彼の感触が身体を埋め、めまいにも似た感覚が残っていたから。 震えるスマホは駄々っ子のように徐々にコール音が長引き、ついには彼が出るまで地団太を踏むようになり続けていた。 「ごめんな」 彼がもう一度謝るので、私は小さく首を振ってベッドの中で背中を向けた。 「なんなんだよ、こんな時間に」 彼の潜めたはずの声は苛立ちで尖っていた。 「お願い、今すぐ帰って来て!」 スマホから漏れる女の声は彼の声よりも静かに響く。 その響きに火照った身体が急激に冷めていく。 私はタオルケットを手繰り寄せ、胸元できつく握った。
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