足りない酸素

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エスカレーターに乗っている間はその一段の段差が二人の身長差を埋めて、真正面から視線がぶつかる。 私は恥ずかしくなってしまい、すぐに目を逸らしてしまう。 なぜなら、アパートよりも明るい場所で彼と顔を合わせるのは久しぶりだったからだ。 今までは彼がそうすることを避けていたはずなのに、今日のガクちゃんは今までとはどこか違っていた。 それから私たちは二階の化粧品売り場で目的のボディクリームを購入すると、夕飯の時間までデパートの中を適当に見て回った。 夕飯は混雑する時間を避けて、彼が早めに店に案内してくれた。 気取らないカジュアルな雰囲気のイタリア料理の店だった。 「カコはさ……、欲しいものとかないの?」 運ばれてきたパスタをフォークに巻き付けながら彼が言った。 「……え?」
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