461人が本棚に入れています
本棚に追加
「さっきから気になってたんだよね。ちょっと高そうだけど、すっごく可愛い」
「……そう?」
「うん。可愛い。どこで買ったの? 結構高かったでしょ?」
「うん……。ちょっとね」
「もしかして……彼氏からのプレゼント?」
「違うよ。いないって言ったじゃん」
「ホントに?」
菜々美は探るような目でわざと下から私の顔を覗き込んだ。
「ホントだって。私の話より今は菜々美でしょ。これからいろいろ準備しなきゃならないし。あ、ご両親への挨拶、いつかは私もさせてもらわなきゃね」
「気が早いよ。まだ決まったわけじゃないんだし」
菜々美は謙遜するが、まんざらでもないらしい。
綻んだ顔が缶ビールの影から覗いている。
そして、微笑みをたたえたままの口元にビールを運んだ。
ゴクゴクと喉を鳴らして飲んだ後、視線を手元の缶に落としたまま静かに言った。
「落ち着いたらお姉ちゃんにも紹介するから」
「……うん。わかった」
「菜々美?」
「ん?」
「おめでと」
「……気が早いよ」
私たちは顔を見合わせて笑った。
最初のコメントを投稿しよう!