存在

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「さっきから気になってたんだよね。ちょっと高そうだけど、すっごく可愛い」 「……そう?」 「うん。可愛い。どこで買ったの? 結構高かったでしょ?」 「うん……。ちょっとね」 「もしかして……彼氏からのプレゼント?」 「違うよ。いないって言ったじゃん」 「ホントに?」 菜々美は探るような目でわざと下から私の顔を覗き込んだ。 「ホントだって。私の話より今は菜々美でしょ。これからいろいろ準備しなきゃならないし。あ、ご両親への挨拶、いつかは私もさせてもらわなきゃね」 「気が早いよ。まだ決まったわけじゃないんだし」 菜々美は謙遜するが、まんざらでもないらしい。 綻んだ顔が缶ビールの影から覗いている。 そして、微笑みをたたえたままの口元にビールを運んだ。 ゴクゴクと喉を鳴らして飲んだ後、視線を手元の缶に落としたまま静かに言った。 「落ち着いたらお姉ちゃんにも紹介するから」 「……うん。わかった」 「菜々美?」 「ん?」 「おめでと」 「……気が早いよ」 私たちは顔を見合わせて笑った。
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