存在

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「実は……いるの」 喉の奥から絞り出すような声だった。 その声の前には深呼吸さえ聞こえてきた。 菜々美は私より美人でお洒落だ。 彼氏がいたって少しも驚かない。 私にはそれほど神妙になる理由がわからなかった。 けれど、電話口での菜々美の態度に、私は今日の本題はこれなのだと気がついた。 そもそも、菜々美から連絡をしてくること自体が珍しい。 妹というのは何か困った時にだけ姉を頼ってくるものなのだ。 「いるならいいじゃない。上手くいってるの?」 私は気づかないフリをして明るく言ったが、内心は次にどんな言葉が返ってくるのか不安だった。 変な男と付き合っていなければいいのだけど。 私は不安に駆られながら菜々美の返事を待った。
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