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私は自分の仕事のことや菜々美の結婚のことを思ううちに、杉本夫妻に会いたくなった。
ずっとその思いはあったものの、あの当時、自分たちの寝る場所よりも私の居場所を先に見つけてくれた二人がその後、どこに身を落ち着けたのかわからないままだったのだ。
夫婦は私のアパートは知っているので連絡を寄こそうと思えばすぐにできたはずだ。
けれど、そうしなかったのは何らかの理由があったのだろう。
当時は全部拭えたと言っていた負債も、もしかしたら、まだ残っていたのかもしれない。
私を安心させるために嘘をつき、
私を巻き込まないために自分たちの居場所を教えないのではないだろうか。
だから私は夫婦のことが心配になりながらも探そうとは思わなかった。
会いたい気持ちは山々だが、本来、杉本夫妻は赤の他人なのだ。
そんな二人は私たち姉妹のために十分すぎるほどのものを与えてくれた。
そして、連絡を取らないこと、会わないことが、あの時から続く彼らからの愛情だと思った。
それに、私たちが再会することは、再び何かを要求してしまうことになるのではないかとも思っていた。
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