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菜々美が帰ったその日、
私の担当する製品の出荷台数の追加要請があり、いつもより二箱も生産数が増えることになった。
一時間半ほどの残業になったが、帰宅した時にも私の身体は月曜日独特のだるさは背負っていなかった。
帰りが遅くなったにも関わらずキッチンに立ち、ビールを片手に料理を始めた。
私は自然とある結婚式の定番ソングを口ずさんでいた。
そして、得意の親子丼が出来上がると、ビールと一緒にテーブルに運んで一人の宴を始めた。
菜々美の知らせはこの上なく喜ばしいものだった。
言うなれば、娘を嫁に出す母親の心境だろうか。
いや、それとも少し違っていた。
私には寂しさなど少しもなかった。
菜々美が幸せになって自分が一人になるのなら、少しも寂しくなんかなかった。
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