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丼の中身が三分の一ほど減った時、卵と醤油の匂いを嗅ぎつけたのか、インターホンが鳴った。
「ガクちゃん……?」
私は箸を置いて玄関に向かった。
「お、いい匂い」
私の予想通り、ガクちゃんだった。
ドアを開けるなり、彼は部屋の中に鼻を突き出して部屋の空気を吸い込んだ。
「煮物?」
「ううん、親子丼」
「俺のある?」
「ううん、今日は来ないと思って。作る?」
「いや、カコの少しちょうだい」
「いいよ。飲む?」
「飲む」
「月曜から来てていいの?」
私は冷蔵庫からビールを出した。
週末は会えていないが、月曜から彼が来ることは珍しかった。
「何かあったの?」
私は親子丼を食べる彼の前にグラスに注いだビールを置いた。
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