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私が神妙に言うと、彼女はわずかな間を置いて笑い出した。
「ガクちゃん!? お兄ちゃん、ガクちゃんなんて呼ばれてるの!?」
私は恥ずかしくなって頬が熱くなり、頬に納まりきらなかった熱が耳の先まで真っ赤に染めた。
「……ごめんなさい」
「いいのよ、別に」
彼女は笑い過ぎて涙目になりながら、目の淵のわずかな水滴を指先で拭った。
「ただ、あのお兄ちゃんにそんな可愛い呼び名があって意外だっただけ。じゃあ、あなたは? あなたは何て呼ばれてるの?」
「私は……美香子だからカコって」
私は彼女と出会ってからここで初めて自己紹介をした。
「やだ、ホントにままごとみたい」
私は彼女の反応に苦笑いを浮かべたが、彼女はそんなことには気づいていないようだった。
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