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彼女に話しかけるガクちゃんの語気は荒い。
私は彼の見せる『怒り』という感情を初めて目の当たりにした。
おそらく……彼女は不倫をしている。
そのことが彼をこんなにも憤らせたのだろうか。
つい先日、彼の兄が離婚したばかりだ。
理由については詳しくは聞いていないが、そのことと関係があるのだろうか。
私は『家族』の間の問題に口を出すことはおろか、今、この場にいることさえ許されることなのかわからなかった。
「……お兄ちゃんには関係ないでしょ」
私は二人の会話を一人離れた場所から黙って聞いていた。
すると、彼女の次の言葉で私は突然二人の間に放り込まれることになった。
「そういう兄ちゃんは何しててもいいって言うの? サト兄のことがあって、お父さん、お兄ちゃんにはちゃんとした人を選ぶって、もうお見合いも決まってるんだからね! こんなところでこんな人とままごとやってる場合じゃないんだから!」
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