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彼女の顔が力なく歪んでいく。
「そう……。お金はいくらでも与えてもらった。愛情の代わりにね。
お父さんは会社と家のためにお兄ちゃんたちにばっかり期待して、可愛がってた。
周りからは末っ子の女の子だからさぞかし大切にされてるだろうって言われてるけど、実際はその逆。私になんて見向きもしない。
私がどんなに会社のために何かがしたいって言っても無駄だし、女だからってだけでお父さんの頭の中からは私は排除されてるのよ。
なのに……お父さんにも、会社にも、家にもそっぽ向いてるお兄ちゃんのことは頭から離れない。
私のほうがお兄ちゃんよりよっぽど家のことも会社のことも考えてるのに、何でなの?」
彼女はため息をついて苦笑いを浮かべた。
私の位置からはその目に薄らと光るものが見えた。
彼女はそれを誤魔化すように周りを見回してガクちゃんからは顔を背けた。
「……もういい。こんなところで話してるのバカみたいだし」
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