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スーパーに着くと、私はそれまでの浮ついた気持ちとは逆に、密かに他人の目を気にしていた。
彼の隣で歩きながら誰かに笑われてはいないだろうかと不安になり、彼に恥をかかせているのではないかと心配になった。
「カコ、昼何?」
私の心配をよそに、彼は明るい表情で振り返る。
彼を見つめる視界の中で、通路を行き来する一般客の目がすべて自分に向けられている気がして緊張で頬が熱くなる。
私は無駄だとわかっていながら彼以外の顔を視界からなくそうとしてわざと目を細めた。
「何食べたい?」
「何でもいい」
「そういう答えが一番困るって知ってるでしょ?」
「でも、カコの作るもん何でも旨いから」
媚びるわけでもなく、そんな風に素直に答える彼に私の強張った頬は力を抜いた。
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