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彼女は私の返事に安堵したように小さく微笑むと話を続けた。
「葉子さん、あ、元奥さんね。葉子さん、サト兄と一緒にいる時間も少なかったけど、家の中では居場所がなかったのかもしれない。
嫁って結局は赤の他人だし。だからって私も葉子さんと両親を取り持つ力もないし、ほとんど見て見ぬフリしちゃってさ。今思えば葉子さんの気持ちをわかってあげられるのはあの家では私しかいなかったのにね。
私たちが傷を舐め合って家の隅で仲良くしてればよかったんだけど、彼女が浮気をしてるって思った時に、許せなくなったの」
そして、彼女は言葉とは裏腹に笑い出す。
「不倫してる私が言うなって思ったでしょ?」
「えっと……」
私が言葉を濁すと彼女はかまわず続けた。
「でも、葉子さんが許せなかったの。もうサト兄を自分のものにしてるのに、それ以上何が欲しいの?って。私には自分のものなんて一つもなくて、葉子さんはもう手に入れてるのに、他にも欲しいなんて虫がよすぎるって思ったの。葉子さんばっかりずるいって……。
でも、私が何を言ったって、誰も信じてくれないだろうから、サト兄にも両親にも相談せずに探偵事務所に調査を頼んだのよ」
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