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「結果は予想通りの黒。そこで初めてサト兄と両親に打ち明けたの。ホント……とんでもないおせっかいよね……」
ふと見た彼女の顔は何かをひどく後悔しているのか、苦痛に歪んでいた。
「私は葉子さんには恨まれて当然だと思うけど、葉子さんは私には何も言わなかった。
もう、私たち家族に失望してたのかもしれないし、高見の家を出られてホッとしてたのかもしれない。
寂しさを埋めるためなのか、買い物依存症にまでなって、葉子さんは新品のブランドものを山ほど残していったけど、それが彼女の寂しさかと思うとやるせない……」
彼女は長いことしゃべった後、汚れを気にしていたベンチの背もたれに身体を預け、空を見上げた。
「葉子さんは何もかも手に入れてずるいと思ってたけど……結局、葉子さんの中には何もなかったんだわ。
サト兄のことだって、透明人間と結婚したようなもの。
確かに結婚はしたのに……いつもどこにいるのかわかんなくて、不安だったと思うな……。
サト兄も離婚はしたくなかったみたいだけど、結局もうその道しかなくなってた。
サト兄もかわいそう。昔から何でもサト兄が選ぶ道は周りが勝手に決めてるから」
彼女は青空に向かって今日何度目かになる深いため息を吐き出した。
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