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「うちだけが何か特別なのかな? 私も、サト兄も、葉子さんも、みんな幸せになるのが下手みたい。
だから絶対、お兄ちゃんだって下手くそに決まってる」
空に浮かんでいた薄い雲が徐々に広がって空に溶けてなくなっていく。
「これじゃあ、高見の人間は誰も幸せになれないみたいじゃん? せめてお兄ちゃんには幸せになってほしい……」
上空を見上げた彼女の横で、私は俯いて足元の雑草を見つめた。
もちろん、私もガクちゃんの幸せを願っている。
彼の幸せのためなら、
この関係を終える覚悟もしているつもりだ。
私は目を閉じて深呼吸をすると、ゆっくりと目を開けた。
「ガクちゃん……あ、ごめんなさい。
お兄さんは幸せになれますよ」
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