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「お兄ちゃん……!?」
私がその声に振り返ると、今度は背を向けた彼から呟くような声が聞こえてくる。
「……凛子」
私はわけがわからず、ほんの数秒間、二人を何度も交互に見つめてしまった。
彼女と一緒にいた中年男性が私と全く同じ反応をしていた。
「お兄ちゃん、何でこんなところにいるの!?」
「それはこっちのセリフだ。何でここにお前が?」
ガクちゃんを兄と呼ぶのだから、目の前にいるのが彼の妹。
混乱する頭の中でたった一つ確信する安堵。
私は思わず身体がふらつき、すぐそばの買い物カートに寄り掛かった。
そして、ガクちゃんに気付かれないように小さく息をつくと、すぐさま身体を起した。
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