遭遇

6/34
前へ
/34ページ
次へ
「お兄ちゃん……!?」 私がその声に振り返ると、今度は背を向けた彼から呟くような声が聞こえてくる。 「……凛子」 私はわけがわからず、ほんの数秒間、二人を何度も交互に見つめてしまった。 彼女と一緒にいた中年男性が私と全く同じ反応をしていた。 「お兄ちゃん、何でこんなところにいるの!?」 「それはこっちのセリフだ。何でここにお前が?」 ガクちゃんを兄と呼ぶのだから、目の前にいるのが彼の妹。 混乱する頭の中でたった一つ確信する安堵。 私は思わず身体がふらつき、すぐそばの買い物カートに寄り掛かった。 そして、ガクちゃんに気付かれないように小さく息をつくと、すぐさま身体を起した。
/34ページ

最初のコメントを投稿しよう!

406人が本棚に入れています
本棚に追加