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私はそんな風に動揺していたが、
例の男性のほうは別の意味ではるかに動揺しているらしい。
顔面から血の気が引いていた。
「……凛子。どういうつもりなんだ? お前の兄貴なのか? お前が呼んだのか? お前……俺に何をさせるつもりなんだよ?」
男が一歩後ずさる。
「違うの!」
「何が違うんだよ!?」
「兄と会ったのは偶然なの!! 私だって驚いてるんだからわかるでしょ!?」
動揺の中に怒りを滲ませた男の声が辺りに響き、
それを後追いする彼女の声が人目を気にせず大きく響く。
付近にいた買い物客が一斉に肉の陳列棚の前にいる四人に好奇の視線を注いだ。
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