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「ガクちゃん……一度、外に出ない?」
事態を正確に把握できないまま私はその場の空気に耐え切れず、思い切って口を開いた。
「……買い物は全部終わったのか?」
我に返ったのか、彼が冷静に私に言った。
「……うん、これで最後だから」
私は手にしていた豚バラ肉のパックをいっぱいになりかけたカゴの一番上にのせると彼を精算カウンターへ促した。
すると、身体の向きを変える間際、彼が彼女を呼んだ。
「凛子、お前も来い」
背後で二人が動き出す気配はなかったが、私たちは先に精算に向かった。
会計の間も彼は終始無言のまま。
私は取り付く島もなく話しかけることができなかった。
私も持参したエコバッグに商品を無言で詰め込んだ。
空になった買い物カゴをレジの横の置き場に戻すと、私たちのもとにやって来たのは
手ぶらの彼女、一人だった。
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