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カコが何のことかわからずにきょとんとする。
俺はその意味を分からせるために彼女に顔を近づけた。
カコが咄嗟に目を閉じようとする直前、俺は斜めに唇を重ねるフリをして寸前のところで止まった。
彼女の唇はもう俺の唇を受け入れようと、柔らかく開いている。
俺はその唇に吸い寄せられそうになるのに耐えて言った。
「……お預け」
彼女はその言葉に閉じかけていた目をゆっくりと見開いた。
「……どうして?」
彼女の甘えを含んだ声に作戦を仕掛けた自分が墜ちそうになる。
幸い彼女にはまだ俺の小さな策略が見えていない。
けれど、彼女の唇はもう落ち着きを失っていた。
俺の唇を待ち望んで小さく開閉する。
その姿は
まるで……
儚く泳ぐ金魚のようだった。
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